「もしもし?今できる?」
『あー3秒待って、トイレ』
「わーんとぅーすりー」
『はい終わり。』
「流してる音する。やださいてーセクハラ男!」
『えっちー』
「あんだとゴルァ」
『男はみんなそうですー』
「ピンクレディーも海外進出ですか。」
『・・・すっごい素敵な響き。』
「うぁ!こいつマジサイテー!オヤジ!!」
『まぁソレはいいとして。どうかしたのか?』
「あ、ん?何が?」
『電話珍しくね?』
「珍しくないよ。3日前もしただろ」
『あーそんなもん?』
「どんなもんだと思ってるのよあんた―――。マグルの生活は23世紀型?ネコ型ロボット流行中?」
『は?』
「いやいいよ、未だにメールの仕組みを理解してない君にはこの話題は無理だ。」
『・・・・。』
「ごめんごめん、怒らないで、お兄ちゃん。」
『誰がお兄ちゃんだよ。』
「あ、そんでさ、なんだっけ。」
『いや俺が聞いたんだよソレ。』
「あーそだっけ、あれ、痴呆症?アルツハイマー?」
『もうすぐヘルパーさんの助けが必要ですね。』
「変なところでマグルに通じるの止めてくれない?」
『やめてあげないー。』
「・・・。」
『んで。何。』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」
『ん?』
「あ、なんかシリウス勘違いしてそうだけど、あたし落ち込んでなんかないよ。」
『は?違うのかよ?』
「違うよ!何でそんな勘違いしてんの」
『なんか、声のトーン?』
「うーん。」
『うん。』
「いや、今日はちょっと違って」
『うん。』
「私さ、ホラ。―――あれなんだよ。」
『うん?』
「だか、ら。」
『ん』
「今日は言おうと思っ―――」

(ピンポーン)

「・・・何の音?」
『あ、ちょっと待って。誰か来た。』
「あ、う、うん。」
『受話器そのままでいいぞ、すぐ戻ってくる。』
「・・・はーい。」

 細い線も何もない。ただ地上に繋がる電波だけが、彼とあたしを結んでる。
 面白いぐらいに脆いこの絆は、きっとあたしがこの番号を押さなくなるだけで途切れてしまうだろう。
 見えない彼の訪ね人に、胸から沸きあがる不安がさらに膨らんだ。嫉妬で狂いそうになる。寝ても覚めても、考えてるのはいつも君のことばかり。
 ジェームズとか、リリーとか、せめてあたしの知ってる人であってほしい。リタでも、シェイラでも、この際いい。本当は良くないけど、彼女達なら自分で色んな言い訳をつけてあげられるから。昔話をしにきたとか、卒業後のアルバムを渡しに行ったとか。
 あたしの知らない人が、彼のテリトリーに入っているって言う事が、限りなく悲しい。許しがたい事実。ホグワーツにいる時は、毎日挨拶して毎日笑い合って。なのに、“卒業”という一文字だけでこんなにも変わってしまった。それでも繋がりがあるだけいいのかもしれない。だけど、

 きっとそんなに強くない。

 知らない香水の匂いもヒールの音も、全て受話器からは伝わらない。

?』
「あ、うん。オカエリ」
『・・・タダイマ』
「・・・」
『・・・』
「えーと、誰だった?」
『・・・・え、あぁ。』
「うん!そうか、うん。いやいいよあは、ごめんごめん。」
『んー。』
「ん?」
『いや、だからさ。』
「ウン・・・。」
『そういうのやっぱイラっとくるじゃん?聞かれて、言う前に謝られると。前から言ってんじゃん。』
「・・・・ん、ごめん。」
『本気で責めてる訳じゃないし、そういう習慣の中で育ってきたんならしょうがないとは思うけど。』
「・・・・・・・・・うん。」
『だからさ、ソレがいや。なんで?ホグワーツいた時は散々突っかかってきてたのに、電話だとマジでわけがわかんねぇ。ホグワーツと違って顔も見れねえんだから、余計気になるだろ?』
「・・・・ごめん。」
『電話もさ、したくないなら別にしてくれなくていいし。』
「は・・・?」
『俺もお前に強要する様なこと言ったかも知れねぇけど、別にしたくもないのに電話してくれなくていいし』
「シリウス・・・?」
『お互い生活する場も違うんだし』
「それ、は。」

(つまりは、あたしの電話が迷惑ってこと?)

「っ・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・は、何。泣いてんの―――?』
「違う。泣いてななんてない。」
『・・・泣いてんじゃん。』
「もう、いい。今日、は。これ以上話せそうにないから、切る」
『フーン。』
「・・・・。」
『あ、そう。』
「じゃあね。」

「―――何・・・。」
『お前もさ、いい加減気づけよ。』
「今、気づいたよ。」
『あーソレ絶対気づいてないね。』
「何よ。」
『じゃぁ何に気づいた?』
「―――・・・改めて、本人に言うような事じゃ、ないで、しょ・・・」
『泣きながら言うような事気づかせるつもりじゃないんだけど?』
「あってるわよ!もういいじゃない、切る!」
『フーン、今日切って、もうかけてこないつもりなのに?』
「わ、わかってるならいいじゃない!!もうかけないわよバカ!」
『俺は自分からは絶対かけないからな?』
「だから―――何なのよ!わかってるわよ!いっつもあたしからかけてるってこと、気づいてるわよ!わかってるのに、言わなくていいじゃない!なんでそんな、信じられない!」
『信じられないのはお前。なんで変わったかと思えばそういうところは変わってないわけ?人の話聞けよ。』
「聞かないわよ!聞いてなんてあげない、もう、一度なんて、聞いてなんてあげない―――」
『だから、お前の勘違いだって!こっちもキレるぞ!』
「じゃぁ、なんなのよ!なによ、シリウスはいいわよね!いっつも人を上から見て、あた、あたしがわたわたしてるの楽しんでるんだもんね。さ、さっきの人だってどうせ、あたしみたいなガキじゃなくて、シリウスの言いたい事全部わかって、シリウス苛立たせる事なんてなくて、泣いて迷惑かけることなんて、な、ない、綺麗な人なんでしょ・・・!」
『うん。』
「サイッテイ!」
『でも俺それ楽しくないし。』
「あた、あたしはオモチャじゃない!!」
『あんたみたいなオモチャがいたら、全部俺が買ってやるよ。』
「・・・・。」
『だから、ホラ。深呼吸してみろって。んで涙拭いて。ティッシュあるか?鼻かめ。そんで俺の写真かなんか見てんだろどうせ。は?バーカ知ってるっつうの。で、はい、どーぞ。』




アイシテルって、言ってみ?


 とりあえず、こいつのテリトリーに入って一発じゃ足りないから3発は殴って、そんであたしの香水の匂いをあいつの部屋に染みつけようって、思った。






【eiko:06'02'19】 えらく辛抱強くシリウスがヒロインの相手をしてると思った。こんな描き方も楽しい