細くて長くて、少し角ばってて骨骨してて。色も私なんかよりずっと焼けてて。 握っているペンの筆圧は、少し強くて、よくインクが切れて。字は綺麗な方じゃないけど、汚くもなく、男の人らしい、小さくてちょっと荒い文字。 隣りにやられた計算をする為の紙を、一枚ペロリと拾い上げてみる。先生の計算式がずらっと乗っていて、計算をとくふりをしながら文字を眺める。 それに気づいたのか、先生は説明する言葉を少し休めて暫く待ってくれた。私が視線を少しだけ先生に戻すと、先生は全くこちらを見てもいなかった。当たり前のことなのに、悔しくて悲しくて堪らない。 人を全て独占したいと思っているのがそもそもの間違いなのだ。 自分の動作一つ一つに興味を示して関心を持ってほしいだなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。 でも、それでも、指を動かす一つの動作でさえ、髪を払いのける手首の動かし方でさえ、好きな人の前では緊張するものじゃない? 見られてないってわかっていても、意識して動かしてしまう。いつでも完璧な、一番可愛い私を見てほしい。毎日何時間も鏡の前で笑顔の特訓をして、控えめでいて可愛らしく見える笑顔を研究し尽くした。それでも、彼の前で本当に笑顔を浮かべる事なんて出来なくて、いつも緊張してガチガチな自分は思っていることとまったく間逆の可愛くない言葉を吐いてしまう。 こっち向いて。 「ん。終わった?」 私の視線に気づいたのか、ふいとこちらを向いた瞬間に燃える様な赤い髪が揺れた。形のいい耳に飾られた牙形のピアスは、何処か病的でいつも視線を向けさせられる。 低く紡がれるバリトンの声。心の奥までじんと響いて あぁ、胸が熱い。 【eiko:06'01'17】 家庭教師なんかしてるビルを想像してみた。 |