『それはいつかのすごくつまらないお話。』













「リーマスの誕生日はいつ?」

そう尋ねると彼は少しはにかんだ笑顔で、そうだね、教えてもいいけれど、と意味不明な返答をした。

「なんでもったいぶるの…」
「なんとなく」
「なんとなくかあ」
「知りたくないの?」

そう言った顔が少し寂しそうに見えたのはキノセイだったかも知れないけれど、あたしは微笑む。

「ちょー知りたい!」
「おしえない」
「ええ、何で!」
「何ででしょう?」
「…リーマスー」
「ほらほら、授業はじめるよ」
「はじめるじゃなくて、はじまるでしょ」
「将来的には、始める予定さ」
「ま、将来的にはね」

リーマスはくすくすと笑って、その時には君も僕の授業を受ければいい、と言った。

「そうだねそうする」
「そうしなさい」
「うん」







昼食時間にリーマスとブラックが歩いているのに行き会った。あたしは一瞬目を逸らし、それから思い出して口を開く。


「そうだリーマス」
「何?
「ねえ、誕生日、教えて」
はこいつの誕生日知らねえの?」
「うん、教えてくれないの」
「3が…」
「駄目だよシリウス」
「何だよ別に良いだろ?」
「なんで教えてくれないの?気になるなー」
「気にさせておきたいからね」
「うっそ!性格悪い!」
「うそ」
「嘘かよ」
「知りたいの?」

そう言った顔が少し寂しそうに見えたのはキノセイだったかも知れないけれど、あたしは微笑む。

「ちょー、知りたい」
「おしえない」
「もう、なんで!」
「わけわかんねー」
「僕にも、色々あるんだよ」
「あ、あたし、何かしたっけ…?」
「いやまさか」
「教えりゃ良いじゃん?もうすぐだし」
「そっかもうすぐなんだね!」
「シリウスー」
「ははは」

リーマスはため息をついて、じゃね、。と微笑んで言い行ってしまった。ブラックも後を追う。
あたしはその後姿を見ていて、一瞬目を逸らし、また戻すとリーマスが振り返って笑った。
どうやら、怒っては居ないらしいけど。何を考えているのか分からない優しい薄い瞳。
そういうとこも、かなり好きなんだけれど。あたしは小さく笑ってリーマスに手を振った。






談話室で本を読んでいると、ふとその本が、宙に浮いた。驚いて顔を上げるとリーマスがいつもの半端な笑みで立っている。

「うあ、何リーマス」
「ヒマそうだから」
「本読んでたじゃん」
「暇つぶしにでしょ」
「ん、よく分かったねー」
「ま、ね。だいたい」
「ふふ」

微笑んだまま、リーマスが持っている本から垂れている細い橙色の紐を目で追っていると、リーマスが口を開く。

「ごめんね、怒った?」
「なんで?怒らないよ」

左右にゆれる紐の行方を目で追ったまま答える。本当に、怒ってなんかないし。
少し面白くて、楽しくて、でもまあちょっと困ってて、わけ分かんなくて、愛おしいだけ。

「ムダに秘密にしちゃって」
「ほんとだよねえ。怒るよ?」
「ふうん…口が笑ってる」
「笑ってないし」
「ふうん…ごめんごめん」
「嘘。笑ってる。リーマスわけわかんないもん」
「怒らないの?」
「わけわからないとこも味だよね」
「ふうん、ありがと」
「そうそう」

リーマスは本に紐を挟んでぱたりと閉じて近くのテーブルに置いた。あたしは紐から目を離し、リーマスを見る。

「僕の誕生日聞いて来てって、頼まれてたのにね」
「あ、知ってたんだ」
「ま、偶然」
「そういうのいや?」
「いやじゃないけど」
「じゃー教えてくれても良いのにー」
「そだね」
「わけわかんないな」
「まあね」
「教えてくれないの?」
「そうだね、教えてもいいけれど、」
「知りたがってた本人呼んできた方が良いの?」
「何で」
「え?いや、何でって…」
「…って、頭悪いの?」
「え!?」
「もういいや」
「えええ何かわかんないけどごめん!」
「怒ってないよ」
「うっそ!」
「ほんと」
「そ、それは何よりだ」
「僕も、が怒って無くて何よりさ」

リーマスは微笑んで、3月10日、と言った。僕が生まれたのは、3月10日だよ、
あたしはすごく嬉しくなった。何がって、この世にその日が存在したことが。その事実が、だ。

「そっか…うん、じゃあお祝いするからね」
「うんよろしく」
「任せて」
「けどその聞いた子には教えなくていいからね」
「何で!」
「…って、頭悪いの?」
「え!?」
「まあいっかー」


いつかは君だけが特別に祝ってくれればいいのになあ、とリーマスがはにかんだいつもの笑顔で言うので、
あたしは暫く考えてから少し笑って目を閉じて、そうだね、いつか、と、答えた。












(sin 060311)…え、バカップルだ。リーマス誕生日おめでとう。